scene1 遭遇

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 龍や貴志がいくら高い速度でコーナーを脱出しても、まるで ゆっくりと走っているかのように。恐るべきパワーと言うべきか。  FD3Sは、下手をすれば追突しかねないほどすぐ前の貴志のRX-7のテールにぴったりとはりつき。突然RX-7の車内にエキゾーストノートが割り込んできた。  内装が取り払われた鉄板剥き出しの車内では、自身のマシンの叫び声がガンガン響き渡っている。  なのにそれでも、聞こえるのだ。  ここまで大きい音がするということは、普通のエンジンチューニングではない。まるでレーシングカーのエンジンそのものであった。 「な、なんなんだ、アイツは!?」  突然の出来事に貴志はパニックに陥りそうになった。  前の龍はそんな貴志のことなどお構い無く、なるべく後ろを意識せず、前に向かって走っていた。  貴志のRX-7同様、龍のMR2も内装は取り払われ鉄板剥き出しだ。はっきり言って2台とも無骨な車内であった。  とても女の子とのデートになんか使えないが、それが目的で車に乗っているのではない。  走るために乗っているのだ。そのために必要の無い物を取り除き、必要な物を取り付けているのだ。  その車内の中で龍も必死に愛機を走らせている。  FD3Sが貴志のRX-7のすぐ後ろについたのはもうわかっている。  ミラーで見るより先に、その音がMR2の室内にも入りこんだのだ。これは龍も驚かずにいられなかった。 「あのエンジン、ただもんじゃねぇ」  我知らずに歯軋りをする。後ろに貴志のRX-7がいるために、はっきりとは聞こえないが。確かに音は聞こえる。FD3Sのまさに獣のような咆哮が。  いくつかのコーナーを抜け、コースももうすぐ終わろうとしている。走る音が駐車場の仲間達にも聞こえてるはずだ。  このコースのイヤらしいところは最後の方に一番長い直線があることだ。  直線を抜けると、コーナーはあと6つしかない。
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