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龍と貴志は無言だった。
不本意な走りしか出来なかったから、何も話す気が起きなかった。そんなふたりを、優と香澄はこれまた無言で眺めている。
それから視線は3台のマシンに向いた。
コズミック-7、スープラ、RX-7。
3台のマシン。
(いや、走り屋の車ってのは、ただの車じゃねえ)
優はマシンを眺めながら、ふっ、と不敵な笑みを浮かべ続けている。
(走り屋にとって、車は魂なんだ)
そこに並ぶのはただ3台のマシンというだけではない。龍、貴志、香澄の魂の具現化なのだ。
アンドロイドの香澄に魂というのはおかしいが。
缶コーヒーを飲み終えたら帰るか、と思ったとき。優の携帯電話が鳴った。
着信を見ればマリーからだった。
「なんだ?」
と言いつつ通話ボタンを押せば、
「ああ、優。さっきドイツのプロジェクト本部から連絡があったの」
と、携帯電話の向こうでマリーが言う。
scene9 triple spirits 了
scene10 last run に続く
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