scene10 last run

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 忌々しく、コズミック-7のテールが目に飛び込むのを睨みながら龍のスープラはコーナーに進入し。その後ろに貴志のRX-7。 「マシンは互角でもウデが違うってか!」  次々と迫りくるコーナーを駆け抜けながら、龍も貴志も香澄のコズミック-7についてゆくのが精一杯だった。  ちらりと香澄はミラーを覗く。  スープラのヘッドライトがミラーに飛び込むように写しだされる。  瞳から飛び込む闇夜のワインディングロードをいかにクリアするか、テラバイトの容量を擁する香澄のAIユニットの中でプログラムが10000分の1単位のスピード処理を繰り広げている。  それが完全無欠ともいえるドライビングテクニックを生み出していた。  無謀だ。あまりにも無謀だ。香澄に挑むことは。  だが龍も貴志も香澄の正体を知らない。知らないからこそ、香澄を人間の走り屋と思って戦いを挑んでいるのだ。 「本当に人間かよ……」  コズミック-7のテールを睨みながら、龍は忌々しげにつぶやく。 (ならオレも人間の心を捨てろッ!)  龍は自分に強く言い聞かせた。マシンとリンクし、マシンの一部になるのだ。  大きく息を吐き出す。 「……」  貴志はなるべく落ち着いてスープラのテールを凝視していた。しかし、どうも心臓がバクバク言ってしまっている。  大きく息を吐き出す。 「!!」  RX-7がしかけようとするのが、気配でわかって。龍はコーナーをインべた気味にクリアしてゆく、が、しかし。  中速の左。大きく息を吐き出して、貴志は敢えてスープラのアウト側にならんで、得意のドリフトをかましながら、左側の前輪をスープラの右側の後輪と並ばせる。 「させるか!」  龍はミラーを一瞬だけ覗き、アクセルを深めに踏みリアタイヤをスライドさせる。スライドするリアはRX-7のノーズに迫ろうとする。 「ちぇ」
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