scene10 last run

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 結局順位の変動のないまま東側駐車場にいたり。そこでUターンしてコースに戻り、今度は東から西へと三国スカイラインを突っ走ってゆく。  龍はコズミック-7の後ろにつきながら隙をうかがう。と言いたいが、コズミック-7はレールの上を走るかのようなスムーズな走りを見せ、徐々に引き離されて、そのテールは徐々に小さくなってゆく。  このままいけば、ヘッドライトの切り開く闇の中へと吸い込まれてしまいそうだった。 「う、む……」  焦りを覚えて無理にでもついてゆこうとすれば、スープラの挙動はあやしくなり。龍の思う通りに走ってくれなくなる。 (落ち着け、落ち着け)  と、自分に言い聞かせる。  大きく息を吐き出す。  これでは香澄のミスを待つ間に、自分がミスをしてしまいそうだ。  龍の後ろにつける貴志はスープラの挙動見ながら、彼自身も落ち着けと言い聞かせながら走っているが。そのスープラの向こうのコズミック-7が徐々にはなれてゆくのを見て、焦りが生ずる。 「龍のやつ、ぼやぼやしてたら無理矢理でも抜くか」  スープラのテールを睨みながらつぶやく。  うかうかとスープラの後ろについている間に香澄に話されてしまえば元も子もない。  しばらく走り、コースも中ほどを過ぎた。どうにかスープラのヘッドライトはコズミック-7を照らしている。が、それもいつまでもつことやら。 「貴志のやつめ……」  龍はミラーを覗いて舌打ちする。前には引き離されそうで、後ろからはぴったりつかれて、2番手のしんどさを今いやというほど味わっている。  右の中速コーナーが迫る。香澄も龍も用心深くインベタのラインでコーナーをゆこうとするが、貴志ははっと目を見開いてスープラのアウト側のラインを描いて、アクセルを踏み込んだ。
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