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「!!」
ミラーいっぱいにコズミック-7のヘッドライトが映し出されて、貴志はプレッシャーを感じた。ついに香澄が仕掛けたのだ。
「ええい、龍、ペースを上げろ!」
咄嗟に貴志は前に向けてライトをパッシングさせる。
「言われなくてもわぁーってらぁ!」
龍はパッシングに怒鳴り返す。
言われずとも後ろ2台を引き離そうと必死こいて走っているのだ。が、あの貴志がパッシングをするなんてよほどのことだ。
「香澄のやつ、仕掛けてきたか」
苦々しくつぶやく。
こっちはタイヤがタレてペースを維持するのがやっとだというのに、香澄は仕掛けられるのか。
(あいつもそうとうタイヤを使っているはずなんだが)
3台とも相当のペースで走っている。その分タイヤも酷使された。だから、3台ともタイヤがタレているはずなのだが――
香澄は、コズミック-7はそうでないというのか。
一晩中走ろうとは言っても、休みもなく、というわけではなく。中休みをとりながら、というつもりだったのだが。
龍も貴志も自分から「休もう」と言い出すのがシャクなので、香澄から言い出すのを待ってもいた。
「あの、バケモン娘が!」
龍は忌々しく叫ぶ。
どうしたら、免許を取ったばかりの歳であんな走り方が出来るんだ。いわゆる、天性の才能というやつなのか。
もうそうとしか考えられないが。ならばこそ、バケモンが、と思うのであった。
「だがオレも意地がある。次の駐車場までアタマでいってやるぜ」
鋭い眼差しで龍は夜闇をヘッドライトで切り開きスカイラインを疾駆する。
3台はそのまま突っ走ってゆく。
香澄の瞳には、必死こいて逃げる2台のマシンが写し出されていた。瞳を通じてAIユニットに2台の挙動が伝えられて、
LIMIT
の表示がしめされる。
LIMIT――
――限界。
スープラとRX-7は限界で走っていた。
「WAIT TO RUSH OR PUSHING」
ぽそっとつぶやくと、前のRX-7へのプレッシャーを強めた。
「くそっ」
後ろからのプレッシャーに圧されて、貴志の心はやや動揺をする。
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