scene10 last run

17/21
前へ
/176ページ
次へ
 龍のスープラについてゆくのもやっとなのに、そこへ来て後ろからプレッシャーをかけられるのは相当な負担だった。  それをどうにかこらえながら走っているうちに、ストレートに近づく。 (ああ、もうだめだ。駐車場についたら休もう……)  貴志の心もいっぱいいっぱいだった。  心臓ばくばくだった。  それほどまでに香澄からのプレッシャーは負担だった。 (あとコーナー8つ……)  左コーナーを抜け右コーナーを抜ければストレートになり、それからコーナー6つで駐車場。貴志の頭はそんなことでいっぱいだった。  それにくわえて、オーバー400馬力のマシンをコントロールする疲労。予想以上のものだった。 「香澄ちゃんはこんなマシンを乗りこなしていたのか」  疲労で動作が鈍くなる。左コーナーを抜けて右コーナーに突っ込む。そのとき、貴志の足も満足に動かせなくなって、思わずブレーキを深めにふみこんでしまった。 「しまった!」  と思ってももう遅い。焦って調性しなおすものの、気がつけばコズミック-7は横に並んでいた。うかうかしているうちにインを取られてしまったのだ。 「ああ、だめだ……」  やむなくコズミック-7に前を譲れば。コーナーをクリアして、ストレートに入った。  RX-7が抜かれたことなど知らず、龍は前を凝視してアクセルを踏み込んだ。香澄もアクセルを踏み込んだ。  コクピットの中マシンの咆哮が轟きわたる。  スープラとコズミック-7はストレートを駆け抜ける。コズミック-7はスープラの後ろにぴったりとつけている。  そしてコーナーが迫る。  龍はギリギリまでブレーキングを遅らせれば、香澄も同じようにギリギリまで粘る。  スープラのブレーキランプが灯った。ふと、右のミラーが光った。インに並ぼうとしているようだった。 「させるか!」  龍は咄嗟にスープラをインに寄せた。それからすぐに、左側のミラーが光った。
/176ページ

最初のコメントを投稿しよう!

16人が本棚に入れています
本棚に追加