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龍のスープラについてゆくのもやっとなのに、そこへ来て後ろからプレッシャーをかけられるのは相当な負担だった。
それをどうにかこらえながら走っているうちに、ストレートに近づく。
(ああ、もうだめだ。駐車場についたら休もう……)
貴志の心もいっぱいいっぱいだった。
心臓ばくばくだった。
それほどまでに香澄からのプレッシャーは負担だった。
(あとコーナー8つ……)
左コーナーを抜け右コーナーを抜ければストレートになり、それからコーナー6つで駐車場。貴志の頭はそんなことでいっぱいだった。
それにくわえて、オーバー400馬力のマシンをコントロールする疲労。予想以上のものだった。
「香澄ちゃんはこんなマシンを乗りこなしていたのか」
疲労で動作が鈍くなる。左コーナーを抜けて右コーナーに突っ込む。そのとき、貴志の足も満足に動かせなくなって、思わずブレーキを深めにふみこんでしまった。
「しまった!」
と思ってももう遅い。焦って調性しなおすものの、気がつけばコズミック-7は横に並んでいた。うかうかしているうちにインを取られてしまったのだ。
「ああ、だめだ……」
やむなくコズミック-7に前を譲れば。コーナーをクリアして、ストレートに入った。
RX-7が抜かれたことなど知らず、龍は前を凝視してアクセルを踏み込んだ。香澄もアクセルを踏み込んだ。
コクピットの中マシンの咆哮が轟きわたる。
スープラとコズミック-7はストレートを駆け抜ける。コズミック-7はスープラの後ろにぴったりとつけている。
そしてコーナーが迫る。
龍はギリギリまでブレーキングを遅らせれば、香澄も同じようにギリギリまで粘る。
スープラのブレーキランプが灯った。ふと、右のミラーが光った。インに並ぼうとしているようだった。
「させるか!」
龍は咄嗟にスープラをインに寄せた。それからすぐに、左側のミラーが光った。
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