16人が本棚に入れています
本棚に追加
2台並んだままコーナーに突っ込む。
香澄のAIユニットは視界にデジタルメーターを表示し、そのメーターは常にレッドゾーンギリギリのところにあった。
それはコズミック-7の限界を示すものだった。
「くぅ……そがぁー!」
まるで磁石でくっついているかのように、アウト側のコズミック-7のタイヤはスライドしながらも路面に吸い付き。アウトに膨らむということはなかった。
コズミック-7はグリップのブレイク寸前のところでスライドをし、そのスピードもアウト側ながらイン側のスープラと同じものだった。
あとコンマいくらか数値が上がれば、メーターはレッドゾーンを突き破り、クラッシュだ。
そんなギリギリのところで香澄はコズミック-7をコントロールしていた。
(基本に忠実ったって、どこまで限界が高いんだ……!)
こうも横に並ばれてしまっては、龍としても打つ手なく。そのまま右コーナーをクリアしてゆき、次は左コーナー。となれば、香澄がイン側になる。
しかし龍もしぶとかった。
コズミック-7と並んだまま、左コーナーに突っ込んでゆこうとする。
香澄がしたように、今度は龍がアウト側から抜くつもりなのだ。
「いけえ……!」
タイヤがスライドし、それをコントロールしながらスピードをあげようとする。
だがしかし。
タイヤのスライド止まらず。スープラは龍の想定外の動きをする。
(やべえ!)
南無三。もうだめだ。さまざまな言葉が脳裏で反芻される。
スープラはアウトへとふくらみ、いくらアクセルを調性しようともタイヤは路面を掴みきれずに――
ドン!
強い衝撃が龍の全身を襲った。
最初のコメントを投稿しよう!