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来た!
龍と貴志はルームミラーを覗かなかった。
音でFD3Sの動きが分かる。
そのマシンはありあまるパワーで自分たちを追い抜こうとしている。
(させるか!)
龍と貴志は思いっきりアクセルを踏み込んだ。
車が後ろから押され、体がシートに押し付けれれるような感覚。
一気に加速する2台。
それを後ろから抜こうとするFD3S。
「出来るものか!」
龍はうめいた。
1台ならともかく、2台まとめて抜く事なんか出来る訳が無い。
(出来る訳が無い……)
2人ともそう信じたかった。だがしかし、ここでFD3Sのパワーが一気に爆発した。
パワーが車を怪物に変えた。
FD3Sが対向車線に飛び出す。
撃墜を確信し、FD3Sのドライバーは思いっきりアクセルを床まで踏み込んだ。
FD3Sはパワーを解放された喜びから、ありったけの雄叫びを上げながら前の2台に襲いかかろうとする。
「な、ええ! そ、そんな!」
貴志は我が目を疑った。気が付けばFD3Sは、貴志のRX-7の横に並んでいた。
「バカな、なんてパワーなんだ……」
FD3Sの左サイドが貴志の視界に飛び込んで来た。そのスピードはすでに100キロを超えまだ加速している、なのにどんどんと前に出ている。
こうなったらもう、抜かれるに任せるしかない。
エキゾーストノートがFD3Sと共に横から前へと移動していくのが聞こえた。
そしてひきよせられるように、龍のMR2の横に並んだ。
「マジかよ! もう来たのかよ!!」
横目でFD3Sを睨みつけながら、龍も貴志と同じように、そのまま抜き去られてしまうしかなかった。
龍のMR2も相当な速度を出しているが。ハッキリ言ってパワーとスピードが違いすぎた、まるで相手にならない。
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