epilogue

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 あの最後の夜からどれほどの月日が経っただろう。  梅雨は過ぎて、夏はまっさかり。  アスファルトも溶けそうな暑さの三国スカイラインの西側駐車場に黒いスープラが停まっていた。  そのそばにはオーナーがたたずんでいる。  龍だ。  龍はスープラのそばで空を見上げている。   太陽照る青空では、数羽のとんびが「ぴーひょろろ」と鳴きながら風に乗って遊んでいる。  ときどきだが、ふとふらりと、三国スカイラインにゆくのだった。  あの夜のことが頭にふと思い出されて、まるで見えない何かに誘われるように、三国スカイラインにゆく。  クラッシュのあと、これと言った言葉を交わすでもない。 「遅いから、もうお前は帰れ」  と言うと、香澄は少し戸惑ったようだった。最後の夜だから、別れを惜しんで、走り終えた後にじっくり最後の会話を、そのつもりでいたのかもしれない。  貴志も少し戸惑ったように龍を見ていた。  香澄の瞳に龍が写し出される。龍の瞳にも香澄が写し出される。  龍は微笑んでいた。 「なんでかなー、負けてもくやしくねーでな、かえってすっきりしたわ」  そう言うと、また「あっははは」と大笑いする。  それにつられるように、香澄も笑った。 「まあ、そーゆーわけだ。もう遅いから、帰れ。あとはオレと貴志でなんとかすらあ」 「龍……」  香澄はへしゃげたスープラを一目見つめると、ため息をする仕草をして、言った。 「うん、じゃあね」 「ああ、元気でな」  龍は笑顔で香澄がコズミック-7に乗り込むのを見送れば、コズミック-7はスキール音も高らかにホイールスピンをしてUターンをすると、20Bのエキゾーストノートを轟かせて三国スカイラインを走り去ってゆく。  それを見送っている間、龍は終始笑顔だった。  貴志も笑顔で見送った。
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