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「頭が痛い……」
と頭に手をのせてつぶやくのはマリーだった。
ここはアメリカ、ロサンゼルスのとある街のストリート。
夜も深まり、街が眠りにつくと同時に目覚める者たちがあった。
それはストリートレーサーたち。
深夜のストリートを駆け抜ける夜のレーサーたち。
様々なカラーリングのマシンたちが集まって、夜のストリートを彩っている。
「ほう、ほほう」
とマシンを眺めてにやけているのは優だった。
「いやあ、アメリカでも楽しめそうだなあ。なあ、ベッキー」
「そうね」
優とマリーはフォードのセダンのそばにいて、ベッキーと呼ばれた、美しいブロンドの髪の少女は微笑んで頷いた。
「日本でも心配だったのに、アメリカでも、こうなるのね」
マリーはやれやれとため息をついた。
その目はベッキーと、そのそばの、パープルメタリックのRX-7とを交互に見つめていた。
「そうだなあ。まさかAIユニットがここまで走り好きになるとは、まったく誤算だった」
優は満面の笑みで、嬉しい誤算、と喜んでいるようだ。それとは対照的に、マリーは憂うつだった。
「そうね……。AIユニットを白人種のボディに移植してテストのためにアメリカに来たけれど、結局は日本と同じことになるなんてね。まったく誤算だわ」
そう、ベッキーと呼ばれた少女こそ、かつて香澄と呼ばれたアンドロイドだったのだ。
アジア系人種のボディのテストを終えて、ドイツのプロジェクト本部にてAIユニットを白人種のボディに移植し、テストのためにアメリカに来ていたのだ。
だがしかし、これはどうだ。アメリカでも結局は日本と同じように走り出すではないか。
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