scene1 遭遇

17/27
前へ
/176ページ
次へ
 ストレートでのエンジンパワーの差を、テクニックで補いきれるわけもなく。  そのままなす術もなく、前に出られてしまうしかなかった。  一体どのくらいパワーに差があるというのか、天と地の差とでも言うのか。  龍は悔しそうに前に出たFD3Sを睨みつけるが、こればかりはどうしようもない。  FD3Sは自車線に戻り。MR2の少し前について、龍にテールを見せつけ、それでもなお後ろを引き離す。 「なんだよ、アイツは……」  その時、ふと龍の目に飛びこんできたものがある。 「COSMIC-7、コズミックセブン? なんだそりゃ……」  MR2のライトの照らす、FD3Sのリアの、自家製とおぼしき「COSMIC-7」のエンブレム。本来なら「RX-7」のエンブレムのある位置にそれはあった。  だがゆっくりと考える暇など無い。   FD3Sのブレーキランプが点灯した。  残りが過ぎようとし、コーナーが迫る。  中速の右コーナー。  FD3Sはまるで山に吸いこまれるようにコーナーを曲がり、龍の視界から消えた。  少し遅れ龍と貴志がそれに続く。  もう後は無い、完全に勝負は付いてしまった。  2台の完敗だった。
/176ページ

最初のコメントを投稿しよう!

16人が本棚に入れています
本棚に追加