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ストレートでのエンジンパワーの差を、テクニックで補いきれるわけもなく。
そのままなす術もなく、前に出られてしまうしかなかった。
一体どのくらいパワーに差があるというのか、天と地の差とでも言うのか。
龍は悔しそうに前に出たFD3Sを睨みつけるが、こればかりはどうしようもない。
FD3Sは自車線に戻り。MR2の少し前について、龍にテールを見せつけ、それでもなお後ろを引き離す。
「なんだよ、アイツは……」
その時、ふと龍の目に飛びこんできたものがある。
「COSMIC-7、コズミックセブン? なんだそりゃ……」
MR2のライトの照らす、FD3Sのリアの、自家製とおぼしき「COSMIC-7」のエンブレム。本来なら「RX-7」のエンブレムのある位置にそれはあった。
だがゆっくりと考える暇など無い。
FD3Sのブレーキランプが点灯した。
残りが過ぎようとし、コーナーが迫る。
中速の右コーナー。
FD3Sはまるで山に吸いこまれるようにコーナーを曲がり、龍の視界から消えた。
少し遅れ龍と貴志がそれに続く。
もう後は無い、完全に勝負は付いてしまった。
2台の完敗だった。
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