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所変わって、ゴール地点の西側駐車場。
FD3Sが通りすぎた後、しばらく騒いでいた智之ら走り屋仲間達はしだいに冷静さを取り戻し、事の成り行きを待っていた。
龍と貴志の勝敗も気になるが、あのFD3Sのことはもっと気になった。
あのマシンは何者なんだ?
どこの誰が乗っているんだ?
龍と貴志と遭遇したらどうするんだろう?
とにかく気になってしょうがない。
そんな折、音がまた聞こえた。
龍と貴志か?
そう思った瞬間、一度聴いたあの音も聞こえた。
甲高い、鼓膜を突き破りそうな、これでもかと言わんがばかりにうるさいあの音。
まさか、と思いつつも皆で耳を澄ませれば。
音はだんだんと大きくなる。
こっちに向かってだんだんと。
皆一斉に道路を覗きこむ。
龍と貴志がやってくる方向を固唾を飲んでじっと見ていれば。
その、まさかがやって来たではないか!
「え、え、え、FDぃーー!?」
「な、引き返してきたのか!?」
「じゃ龍と貴志は?」
FD3Sは減速し、ウィインカーを付け駐車場に入って来れば、皆一斉に注目するが。それにお構いなく、適当な場所を見つけて停まる。
さっきまで雄叫びをがなり立てていたエンジンは今アイドリングに入り、地の底から沸きあがってるかの如く、低くこもった音を駐車場に響かせている。
暗闇の中、駐車場の灯りにほのかに照らされる謎のマシン。
かなり派手なマシンだ。
パープルメタリックカラーに彩られたボディ。社外製の黒い軽量カーボンボンネット。ボンネットには、衝撃で不意にボンネットが開くのを防ぐボンネットピンがあった。
スポーツカー特有の、上下に開くリトラクダブル式のヘッドライトは閉じられている。瞳を閉じて一休みというところか。
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