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たまたますれ違って、来た道戻って2人を追い抜いただけ、と言わんがばかりに。龍も貴志も一瞬ムッとしはしたものの、なんとか冷静を保ちながら貴志が口を開いた。
「そうだよ、走ってたのはオレ達2人だけだけど」
「そうなの……。さっきはどうも」
「いや、まぁそれはいいんだけど……」
って、よかねーよ、と思い直しながらも龍は言った。
「すごく速いな、そのFD。どんなチューニングをしているんだ?」
龍は敢えて自分達が抜かれた事には触れず、FD3Sを見た。
本当なら何か一言言ってやりたかったが、今は何を言っても負け犬の遠吠えでしかない。
貴志も同じだった。ただそれよりも、香澄よりもFD3Sに興味を示しているようだ。
同じロータリー使いとして、どうなっているのか気になり、
「よければボンネットを開けて、エンジンを見せて欲しけど。いいかな?」
と言えば。香澄は少し考えてから、
「いいわ」
と、言った。
皆、エンジンがどうなっているのか興味津々だった。
F1ばりの排気音をがなり立てるほどチューニングが施されたロータリーエンジン。
香澄はエンジンを切るとボンネットピンを解除して、ボンネットを持ち上げた。軽量のカーボンボンネットだけあって、羽を持ち上げるように軽々と上がる。
「少し暗いけど、見えるよね?」
ボンネットを持ち上げたまま、香澄は言った。
「ああ、わりぃな」
一応礼を言い。龍と貴志、そして智之ら走り屋仲間が、エンジンルームを覗きこむと。一斉に歓声が上がる。
「と、トリプルローター、20B……」
はっと、龍はリアのエンブレムを思い出した。
あの、COSMIC-7のエンブレムを……。
「これは、すげぇ……」
皆、異口同音にすげぇすげぇを連発していた。もうそれしか言うことが無い。
「20Bじゃないか。よく載せてるよな……」
貴志がうめくように言った。
てっきり本来のツインローター13B-REWが載っていると思っていたのに、 まさかユーノスコスモのトリプルローター20Bが載っているとは思いもよらなかった。
エンジンルームをさらに覗きこめば、色々と工夫がなされているのが見うけられ。目では見えない所も、手が行き届いているのは容易に想像できた。
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