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特にラッパの先っちょを思わせる、トリプルローターであることを主張する 三本のエアファンネルに注目する。
そしてパワーを絞り出す為の必需品である、タービンがどこにも見当たらないのも気になった。
「まさかNA?」
「ええ、コスモの20Bをペリフェラルポート化して積んでるわ。タービンを外してNAにしてね。もっともこれは私がやったわけじゃないけど……。馬力はマックスで460馬力は出てるわ」
と、香澄はしれっと言うが。これはとんでもないことだ。このマシンは、高度なチューニングを施されたモンスターマシンと言う事だからだ。
RX-7に搭載されている従来のツインローターの13Bに比べて、20Bなら同じパワーを出すにしてもそのパワーに対するキャパシティに余裕がある。
それに加えてターボでなくNAでも、460馬力というハイパワーを叩き出せるのはペリフェラルポート化の賜物だった。
そんな20Bを軽量で空力の良いFD3Sのボディに搭載することで、性能がより生かされる。
もちろん、こんな車をキッチリ仕上げるのはハンパでないくらいに難しい。他の車のエンジンを搭載しているのだからなおさらだった。
それを思うと、これを製作した者はかなりな技術を持っていると言う事でもあった。
マックスパワーを聞いて、周りは騒然としている。
龍と貴志は直線で抜かれた時のことを思い出していた。
あの圧倒的なスピードは、このエンジンあってこそで。エンジンを覗き込んでいる連中の中には、感激してるやつもいる。
それも当然のことで、トリプルローターペリのマシンなんてめったにお目に掛かれたもんじゃない。
龍も貴志も智之ら仲間たちも、皆このエンジンに魅入られている。
「もういいかしら?」
いつまでも相手をしていられない、という風に香澄は冷たく言う。
「あ、ああ。ごめん。ありがとう」
貴志がそう言うと、香澄はボンネットを閉めボンネットピンを止める。その最中、龍は舌打ちし。
「なるほど、だからコズミック-7か。コスモのエンジン積んだRX-7で、コズミック-7なのな。シャレが効いてるじゃねぇか」
と吐き捨てるように言い、悔しさをあらわにする。
直線で抜かれた時、まざまざと見せつけられたCOSMIC-7のエンブレム。
あの時の記憶がフラッシュバックする。
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