16人が本棚に入れています
本棚に追加
愛車のシルビア(S13)のそばで柿崎智之(かきざきともゆき)が各所の待避所にいるドライバーたちから、2台の戦況報告を聞き入っているのだ。
智之の報告を聞いたドライバーたちはそれぞれわーっとはっしゃぎ、
「やっぱり勝つのは龍だぜ! 今夜はもらった!」
と叫ぶやつがいれば、
「いや貴志が逆転するかもしれねえぞ。そのときに吠え面かくなよ」
と言うやつがいる。それぞれの手にはカネが握られていた。賭けをしているらしい。
そんなことなど知らず、龍は夜闇の先を見据えてMR2を疾走させ。貴志のRX-7がそれに続く。
コンバースのハイカットのフィットする足はたくみにアクセルとブレーキ、クラッチペダルを踏み分ける足捌きを見せ、龍の背中にぶつけられるように車内に轟くマシンサウンドが小気味よく叫んで。まるでレールの上を走っているかのようなスムーズな走りを見せている。
その後ろのRX-7といえば、コーナーに対して車自身が余計に斜めの姿勢になって、タイヤを叫ばせながら激しくリアタイヤを滑らせていた。
「おおー、貴志のドリフトはいつ見てもかっけーな!」
道端のギャラリーは龍のMR2よりも貴志のRX-7の走りを見て喜んでいた。
ふぅー、っと息を吐き出し、貴志は赤く灯るMR2のテールを見据えていた。
「くやしいが、龍はやっぱうめぇ」
コーナーで斜めに向きすぎる愛機を逆ハン切って、吼え猛る愛機をどうにかコントロールし山際やガードレールすれすれで走らせていた。
2台のマシンは東から西へと、三国スカイラインを駆け抜け。ゴールとなっている東側の駐車場の智之は、このバトルのいきさつを思い出していた。
最初のコメントを投稿しよう!