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それはある日のことだった。
夜の三国スカイラインに車たちが集まって、思い思いに走っている。その中、ひときわ速さを見せ付けるマシンがあった。龍のMR2だ。
龍は三国スカイライン最速の走り屋。
それを道端で眺めていた智之は、そばにいた貴志に、
「なあ、貴志。お前、龍とイッパツやってみねえか」
と言って。貴志は目を丸くして、
「オレはそんな趣味はねえよ」
と言って。智之をずっこけさせた。
「馬鹿。そんな意味じゃねえよ。龍とバトルしてみろよ、ってことだよ」
「龍と?」
「そうだよ。お前RX-7で走り出してからめきめき速くなったじゃねえか」
「そうかな?」
貴志は片手に持つ缶コーヒーをすすりながら、智之の言葉を聞いていた。
「お前はバイクじゃ遅かったのに、四輪じゃ速えんだもんよ。もう龍と同じくれえかもだぜ」
「んー……」
缶コーヒーを口元からはなして、貴志は夜空を見上げ。自身のバイク時代を思い出す。
半年前まで、スズキのRGV-Γ250で走っていたのだが。どうにも遅くて、いつも一番ビリッけつだった。
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