scene1 遭遇

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 で、それが悔しくて、つい無理をしてしまって。クラッシュ。Γは一発廃車という羽目に。  幸い身体は無事だったものの、 「やってらんねーよ」  とふてくされて、やけくそになっていたところ、悪友とも言うべき智之に、 「まあまあ、バイクがダメなら四輪で走ってみねーか?」  とのそそのかしに乗って、四輪に転向し、RX-7を愛機にした次第。  それからセンスなのかどうなのか、とにもかくにも貴志はメキメキと頭角を現し。ついには最速の龍のMR2についていけるまでになった。  龍の方でも貴志を見込んだようで、 「よう」  と話しかけられて以来、龍、貴志、と呼び合う仲にまでなった。 「お前、最速の座を奪い取れるかもしれねーんだぞ。バイクでの悔しい思いを晴らす絶好のチャンスじゃねーか」 「あー……」  夜空を見上げながら、貴志は考え込んでいた。そんな貴志を智之は突っついた。そこへ、ひととおり走り終えた龍のMR2が、タイミングよく来たものだった。  ふたりを見て、車から降りながら、 「もう走らねーのか?」  と言うや。智之は嬉々として龍にすりよった。 「お、いいところに来た。龍、貴志がお前とバトルしたいってよ!」 「バトルぅ?」 「そそ。お前と最速の座を懸けて勝負してえってよ」 「うん、まあ。……え? おい智之、お前何を勝手なこと言ってんだ!」  かたわらで聞いていた貴志ははっとして言うが、気がつけば龍の鋭い視線が飛んでいた。 「あー……。龍」 「いいぜ、オレは」  龍は愛機のフェンダーに軽く腰掛けて腕を組み、不敵な笑みを浮かべている。 (あーもう、智之のやつ)  貴志は眉をひそめて智之を睨んだ。が、もう逃れられそうになかった。正直、自身にどのくらいのポテンシャルがあるのか未知数で、自信はあまりなかった。 「いいじゃねえか。バトルしようぜ」  龍は不敵な面構えになって、貴志を、その愛機のRX-7を見据えていた。 「まあ、オレも手ごろな相手がいなくて、退屈してたんだ。お前が相手なら、楽しいバトルになりそうだな」  立ち上がって貴志のもとまでゆくと、握り拳でその胸を軽く叩いた。 「んー……。仕方がねえなあ、もう」  貴志もあきらめて苦笑いし、自分の拳を龍の拳に軽くぶつけたのだった。
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