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「家の者はみんな知らなくて、行方不明かと大騒ぎだったらしい…。
貴兄さんが、彩のお父さんと電話で釣りに行く約束をしてたのを思い出して、彩のお母さんに尋ねたらビンゴ。
…彩のお母さんも釣りの場所は知らなくて、ここまで電話をかけてきたというわけ。」
「…あはは。」
「…今、探して迎えに行こうとしてるみたいだ。」
私の結婚式の準備などで何度か上京しているうちに、私の父と誠さんのお父さんは、馬が合ったらしく、仲良くなっていたのは知っていたが…。
趣味多彩なウチの両親は、誠さんのお父さんにいろいろ紹介していて…。
特に父は、誠さんのお父さんと共通の趣味だった囲碁から始まり、釣りにも誘ったとは言っていたが…。
なんか…私の父と仲良くなってから、だんだん不良化してない?誠さんのお父さん…。
「まったく…貴兄さんに会社を譲ってからというもの…父さんは…。」
もともと兄弟仲は良かった篠原家だが、誠さんとお父さんのわだかまりが解けてからは、本当に家族仲良しになった。
それにほっとしたのか…誠さんのお父さんは仕事そっちのけらしくて…。
このまえは、誠さんのすぐ上のお兄さん、慧さんに会いにイタリアに行ってたし、翠さんのいる大阪へもちょくちょく顔を出しているらしい。
翠さんが、歩くんを甘やかしまくるので、来ないで欲しい!なんて言ってったっけ。
そのうち、ここへも『やあ』って来たりしてね。
思わず、想像して笑みがこぼれた。
「彩…?」
「あ、ごめんなさい、なんでもないの。おかえりなさい。」
「あ、ああ。ただいま。」
改めてお互いに挨拶を交わしながらキスをする。
ちょっとテレるけど、部屋には誰もいないしいいよね。
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