離れていても #2

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====================== 居間の窓際で、私はグラスに注がれたウイスキーを夕日に当てつつ眺めていた。 父はソファに腰掛けもの思いに耽っている。 かなりの時間こうしているのだが… 父は話を切り出す気配も無く… 別室に残してきた彩のことが気がかりだった。 久しぶりに彩に会えたのだ。 父といえど、邪魔してほしくないのだが。 篠原の屋敷に着くと、父の指示で彩は別室へと案内され、そこで待機を命じられた。 先に私と話したいとの事だったのだが… 居間へ入り、酒好きの父への土産として持って来た、木箱に入ったスコットランドのウイスキー、ボウモアを渡すと父は懐かしそうにビンを眺め、バーカウンターからグラス二つを取り出した。 一緒に飲もうということか… 父はじっくりとボトルを眺めたあと、封を切りグラスへと注いだ。 「変わらないな…この香り…。…よく見つけたな。」 父は満足そうに言う。 その声に探した甲斐があったと思った。 父がイギリスにいた頃… 母と出会った頃の酒をと… 手を尽くして探させて、手に入れたのだった。 ラベルも瓶もその当時のままのものを。 ウイスキーの入ったグラスを私にも手渡し、父は乾杯のポーズをとった。
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