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「新しいロイドの当主に。…よくやったな。」
「…ありがとう。」
父の素直な賞賛が嬉しいものの、どこか寂しさを覚えながら、私はグラスのウイスキーに口をつけた。
独特な土の香り…
磯の香りもどこかから漂ってくるようだ…
若かりし父もこれを飲んだのか…そう思うと感慨深かった。
父は一口飲み込むと、目を細めた。
「…懐かしいな。」
満足そうに頷くのを確認して私は話を促した。
「父さん…今日は何の話…」
「まあ、待て。」
父が私の言葉を遮る。
そして、ゆっくりとイスの背にもたれ、瞳を閉じた。
何かを懐かしむように…
そしてお互い無言のまま時間が過ぎていった。
静かな部屋に夕陽とウイスキーの香りだけが満ちた。
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