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「決めて良いんですか?」
木崎さんの規則的だった瞬きが一度ゆっくりになり視線がこちらに流れてくる。
「いいよ。1人辺りの経費の話は課長に聞いて?」
別段興味もなさそうにそう言ってまた視線を外した。
「小川、予約何人で取ればいいか教えて」
「あ……おお」
フロアを出て喫煙ルームの横の自販機前まで2人で来た。
「なんか、温度の低さが似てるよね木崎さんと羽山って」
小川が自販機のボタンを押しながらそう言った。
「温度?」
聞き返すと中腰で飲み物を取り出し上目遣いでこちらを見る。
「冷めてるっていうか」
「落ち着いてるの間違いじゃない?」
「…………」
カシュっと音を立ててプルタブを折る彼は何か言いたそうな表情のまま缶コーヒーを口に運んだ。
「ど?おきさき様の印象は」
自販機に寄りかかり小川が問う。
「女の人だったんだ、って思った」
「え?あれ、言ってなかった?」
「言ってないね。お前が格好良いとか言うから男だと思い込んでた」
「でも実際格好良い人でしょ?
仕事もかなり男前なんだよ」
「言ってる事は理解出来る」
「でしょ?」
何故か嬉しそうに小川は笑っていた。
腕時計に視線を落とし時間を確認する。
「そろそろ新宿に戻るわ」
「うん、じゃあまた」
小川は手を軽く上げて小走りで戻って行った。
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