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歓送迎会は3月の末日になった。
個室に仲居がついていて、料理も一人分に盛り付けられた皿が目の前に置かれる。
「こういうスタイル楽だよねー。良いとこ知ってるね羽山」
「料理も美味しいし、雰囲気良いし」
「酒の種類も豊富だし」
課長や嶋野さんが口々に褒めてくれる。
自分の隣に座っている木崎さんは会話を盛り上げるわけでもなく一緒に笑うでもなく自分のペースで酒と食事を口にしていた。
「美味しいですか?」
問い掛けると木崎さんはこくりと頷いた。
「木崎さん珍しいですね、結構食べてる」
向かいに座っている小川が言う。
「木崎さんが飲み会で飯食ってる所初めて見たかも」
「…………」
木崎さんは箸置きに箸を置いてしまった。
お猪口に手を伸ばしたので徳利を持ちついだ。
「ありがとう」
「いいえ」
「わぁ、珍しい。羽山が酒をつぐなんて」
「小川うるさい」
わざわざ口に出さなくていい事を口にする。
だから今一つモテないんだよ、お前は。
焼酎のグラスを口に運ぶと丸い氷がカランと音を立てた。
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