第1話

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営業だからだろうか 皆お酒に強い。 「二次会行く人ー」 その声に手を挙げなかったのは自分と木崎さんだけ。 「ノリわりーよ羽山」 顔を赤くした小川が肩を組んでくる。 その腕を払って課長達に頭を下げる。 「すいません、これから会社に戻ります」 「えー仕事すんの?信じられない」 「今日はありがとうございました、明日からよろしくお願いします」 クダを巻く小川を交わして挨拶をすると皆笑顔で答えてくれた。 社内でも激務と言われる第一営業部の面々は意外と穏やかな人が多い。 顔に出ない人ばかりだからだろうか。 ある意味食えない人ばかりと言う事か。 小川の素直さが少し羨ましい。 そういうスタンスでいる方がきっとこの中では上手くやっていけるのだろう。 二次会に向かう皆の背中を見送って会社に戻ろうと踵を返すとその先に木崎さんの後ろ姿を見つけた。 「先輩」 呼びかけても振り向く事はない。 「木崎先輩」 やっと自分の事だと気付いた様で此方を振り向いた。 「……お疲れ様」 ぺこって頭を下げられた。 ストレートの髪がさらっと揺れる。 トレンチコートの裾を翻して去って行く後ろ姿をただ見送った。
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