第1話

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「羽山って海外事業部いた時日本にいた?」 嶋野さんがパソコンの隙間から顔を出す。 「1年ちょっとシンガポールにいました。でも僻地なのでテレビで映る様な所はほぼ見てませんけど」 「へぇ、道路?橋?」 「道路です」 「そっかぁ」 斜め向かいの席の嶋野さんが前のめっていた体制を戻しながら言った。 「興味あるんですか?海事」 俺の向かいの席の親元さんが嶋野さんに問い掛けた。 「いやぁ、いつ動くかわらかんからね。経験者に聞いとかないと」 隣の席の木崎さんはそんな話聞こえていないかの様に、ノートパソコンのディスプレイを見つめながらカタカタと打ち込んでいた。 「木崎だって来年あやしいだろ?」 カタッ Enterを押して音が途切れた。 「そうですね」 ふと視線を上げて嶋野さんに返事をする。 「で、実際どうだった?」 「まぁ自分は期間も短いので何とも言い難いですが、日本人は真面目だなって実感しました」 「へぇ」 「内勤の人とか散々でしたよ? 自分でやった方が早いし正確だから頼んだりしませんでしたけど」 「あー、羽山もそういうタイプだ」 嶋野さんはにやっと笑った。 も?
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