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『来年私がここいるか分からないから』
木崎さんはそう言っていたけど、それはこちらも同じなんだ。
「羽山飯いける?」
昼に親元さんに声をかけられた。
「あ、はい」
「俺らが良く行く定食屋、結構使えるよ。羽山って1人暮らし?」
「ええ」
「自炊は?」
「してません」
「じゃあ野菜とか沢山食べられていいと思うよ?」
親元さんに連れて来られたのは会社から徒歩数分の定食屋。
藍色の暖簾が風に靡いていた。
中に入ると嶋野さんと課長が既に席に座っていた。
「外国と日本じゃ勝手が違う?」
注文を待つ間おしぼりで手を拭きながら課長が俺に問う。
「そうですね」
「俺もいた事あるの海事。南米にいたんだけどこっちの要求が通らない事が多くて工期がずれるし、そういう煩わしさがあったよ。
まぁずれた所で施主がやいやい言ったりしないから良いんだけどね」
「ですね」
「それに比べたらやり易いよ」
第一営業部一課の面々はとても落ち着いている。
何故こんなに余裕で懐の広い人ばかりなのだろうか。
さりげない気遣いと、面倒見の良さ。
ありがたい環境に置かれた事に感謝する。
ここで働ける間、全てを吸収しよう。
残された時間は多分そんなに長くないのだから。
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