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3月は忙しい。
うちの部は売り上げ目標は達成していても利益が未達だから皆が目の前の仕事を受注する事に力が入っている。
小川の異動の話も頭の片隅に埋れていた。
「木崎、会議室空いてるか調べて貰える?」
嶋野さんが受話器を耳にあてながらパソコン越しに顔を出した。
「あ、はい。何名で利用します?」
会議室予約状況を確認する。
「5名、11時から2時間」
「じゃあ第3会議室取っておきます」
「ありがとう、そしたらセッティングも任せて良い?」
「あ、はい」
「木崎も出れたら出て」
「……はい」
何だろう。事業本部長でも来たのだろうか。
第3会議室の鍵を開け、電気を点けて冷たい部屋を暖める。
プロジェクターの準備と席の配置を直していた時、扉がノックされた。
「木崎、ちょっといい?」
扉を開いた課長が顔を出し私を呼ぶ。
「はい」
扉の方へ歩み寄ると、課長の後ろに男性がいた。
見た事も無いすらっとした人。
涼しげな目元、鼻筋が通っていてきりっとした眉をしたその男性を課長はこう紹介した。
「4月から入ってくる羽山」
「羽山理央です」
課長に紹介されたその男性が名を名乗った。
「…………」
はやま、りお。
その男性の顔を見つめた。
なんだ、男じゃん。
「木崎です」
小さく会釈をした。
何が可愛いやつですよ。だ。
しゅっとし過ぎて表情だって無くて全然可愛いって感じじゃない。
本当に、小川の言う事は当てにならない。
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