第1話

6/18
前へ
/18ページ
次へ
単に私が社内事情に疎いだけだろうか? 私の課のメンバーは皆羽山の事を知っていた。 仕事が出来て、見た目も良い。 それ位の情報は入ってくるらしい。 「木崎はもっと周りに興味を持て」 嶋野さんが苦笑い。 だってそんな情報、私の仕事に関係ないじゃないですか。 大手ゼネコンの初見(はつみ)建設が私の勤務先。 私のいる第一営業部は主に官公庁の物件を扱う。 書類の細かさは他と比べ物にならない。 補助金申請なんてあった日には眩暈が起こる。 雑務が多いため残業が当たり前。 だからアシスタント以外の女子はあまりいない。 結局今は紅一点。 女子力の低い、色気も無い、紅。 「木崎の元に着いてもらう事になるから」 会議が終わり、課長が羽山にそう告げた。 「よろしくお願いします」 小川とは見事に正反対。 表情がまるで無い。 私も人の事は言えないけど、笑ったり怒ったりしなさそうな人だと思った。 私は落ち着き払った羽山に軽く会釈を返した。
/18ページ

最初のコメントを投稿しよう!

495人が本棚に入れています
本棚に追加