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「……財布か。拾って交番に届けるにしても、家と反対だしなぁ。とりあえず、近所の人のかもしれないし、中身を確認するか……」
その行動が物語の始まりである。
「学生証? うちの学校の……同学年の……浅本…雪音?」
(あの初日から友達たくさん出来てた人のだ……)
それは楯一の苦手なタイプであった。
(まぁ、拾ってしまった以上、後戻りは出来ない。しかし……届けるのか……あの人に)
入学式終了から解散の間にクラスの半分が彼女と仲良くなった。おしとやかだが、とても友好的で社交的。おまけに可愛い。裏表のない純粋さが漂っていた。
(まず確実に三人は彼女と話しているだろう。楽しそうに会話している中に財布を届ける俺……)
そのシーンを想像する楯一。
「……」
「無理無理無理無理無理っ!? そんなコミュ力無いしなにより度胸が無いっ!!」
道端で悶えて独り言を叫び、変な目で見られる楯一であった。
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