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―其ノ弐― #2
◇
メイド喫茶“キャットウォーク”にて行われていた女子一同による“村雲照子告白作戦会議”は、場所を移し某有名ファミレスチェーン店にて続きが行われていた。
女子のみでの話し合いではいい策が思い浮かばず、大人の恋愛話を参考にしようとした結果は散々であった。次に彼女らが取った作戦が、これである。
「というわけで、特別講師の剣岳天吾さんに来ていただきましたー。皆拍手!」
きずなに紹介された天吾は、女子の拍手に照れながらペコリと頭を下げた。
「キャットウォークの近くで出会うなんて、ホント偶然だよねテンゴ!」
「うん。ところできずなさん、ボクは何でここまで連れて来られたのかな? 特別講師って何?」
どうやら、ろくに説明もせずに引っ張ってきたらしい。きずなは照子に「例のこと話してもいい?」と確認を取ってから、自分達が悩みに悩んでいる告白作戦のことを天吾に話して聞かせた。話している間、照子は恥ずかしそうにモジモジしている。
「なるほど。村雲さんが社木さんのことをね」
天吾は頷くと、手帳を開き速筆でメモを取る。
「ちっ、ちちちちちょっと剣岳君!? 何でメモしてるの!」
「え? あぁ、ゴメンゴメン。ついいつもの癖で」
笑いながら謝ると、天吾はメモをしたページを千切り丸めて捨てた。憤慨のあまりに立ち上がっていた照子は「くれぐれも口外しないでくださいね!」と念を押してから椅子に座り直す。
「事情はまぁ理解できたよ。でも、ボクは具体的には何の講師をやればいいのかな?」
「決まってるでしょ」きずなが人差し指をピンと立てる。「ラブレターの講師だよ」
剣岳天吾は新聞部に所属していることもあり、文章で他者に物事を伝えることが上手い。そこを見込んだきずなの人選である。
「ラブレターか。書いたことないけど……やってみようか」
「待ちなさいよ剣岳」
ここでお堅い委員長、育が食ってかかる。
「書いたことないのに講師なの? おかしいわよそんなの」
もっともな意見であった。育の意見に、叶と照子も頷いている。確かに同じ文章といっても、新聞とラブレターでは大いにことなる完全な別物。初心者に講師を頼んでいるのと、何ら変わらないように思える。
だが、新聞とラブレターが同じ“文章”である限り、天吾にとってそれは些細な問題であった。
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