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「待て」
急な提案に、当然ながら大介から待ったが入る。
「人を泊められるほど綺麗な部屋じゃないって」
「何だ。エロ本でも出しっぱなしにしているのか?」
エロ本に関しては畳の下というまさかの場所に隠しているので、見つかる心配はまずない。実際はきずなに一度バレているのだが、大介に関するきずなの記憶は刈り取られているので、実質誰にもバレていないことになる。
本とは関係なく、大介は二人を自分のアパートへ泊めるのに抵抗があった。相手が初対面であること。泊められるほど立派な部屋ではないこと等、理由は多々ある。よって、大介は芦長を説得に入った。
「いや、だってワンルームだし、今の時期はゴキブリも出るぞ」
「ゴキブリなんぞ何処にでも出る」
「布団とかどうすんだよ?」
「お前のを二人に貸せばいいだろ」
「でもほら、四人だと流石に狭いし」
「おっと、うっかりUSBメモリーがパソコンに刺さった」
「泊めましょう! 泊めましょうとも!」
弱みを握られている大介に、拒否権など端からなかった。
◇
メゾン怒羅魂(ドラゴン)。若かりし頃は相当やんちゃだったらしい大家さんが管理する、木造二階建てのボロアパートの二○三号室。そこが大介のプライベートが詰まった城である。
「わー、汚ねー」
家に上がるなり、節沢が失礼な第一声を放つ。彼にピタリとくっついている優花の顔も、何処か不満そうである。
時刻はいつの間にか午後八時を回っていた。夕食は先程のハンバーガーショップで済ませてきている。
「今日は疲れたし、もう風呂に入って寝ようかハニー」
「賛成よマイダーリン」
ということで、大介と芦長は外へとつまみ出された。ワンルームのアパートには脱衣場などという大層な空間は確保されていない。つまみ出すのは彼氏としてもっともな判断である。
「それじゃあ、風呂上がったら呼んでくれ」
「何を言っている瀬野。俺達は今からずっと外だ」
「……え?」
芦長の非情な言葉に、大介は愕然とする。
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