―其ノ弐― #2

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「それは野宿ってことか?」 「というか、お前眠る気だったのか? 一番危険な夜中に護衛が眠ってどうするんだアホめ」  言われてみれば、ごもっともである。いきなりの徹夜決定に、大介は肩を落とした。 「そういうわけなんで、よろしく頼むよ瀬野君。探偵さんも」 「よろしくお願いします」  節沢が玄関でひらひらと手を振り、その後ろで優花がペコリと頭を下げる。今更断ることなど勿論できない大介は、渋々了承した。  玄関ドアを閉めようとした時「待った!」と節沢が二人を呼び止める。 「くれぐれも覗かないでくださいよ」 「鶴の恩返しかっ! 覗かねーよ」 「信頼していますからね二人共。それでは」  そしてドアが閉じられ、内側からガチャリと鍵がかけられた。 「全く信頼されてねぇ!」 「そんなことはどうでもいい」  芦長は大介のツッコミを流し、護衛の説明に入る。 「俺はアパートの裏を見張る。お前は玄関の前だ。敵が現れたらボコせ。以上だ」 「シンプルだな」 「わかりやすくていいだろう。いいか、くれぐれも寝るなよ」  そう言い残し、探偵はアパートの外階段を下りて裏側へと向かっていった。残された大介は、これから過ごさなければならない膨大で暇な時間のことを考え、うんざりする。  それでも、己の羞恥映像を取り戻すためだと自分に言い聞かせ、腕を組み背中を冷たい玄関ドアに預けた。  程なくして、シャワーの音が聞こえてくる。優花のシャワーシーンを想像し、思わず鼻の下が伸びる大介。  エロい顔をした護衛は、その後も自分のアパートを守護し続けた。  ◇  うとうとしていた大介を現実に引き戻したのは、室内から聞こえてくる微かな声であった。携帯電話で時間を確認すると、時刻は深夜一時。見張りを開始してから五時間が経過していた。  眠っては駄目だと自分の頬をパチンと叩き、気合いを入れ直す。草木も眠る静かな夜。聞こえてくるのは、たまにアパートの前面道路を通り過ぎる車の音と、室内から聞こえる微かな音。大介の興味は、後者の音へと向けられた。
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