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「しかし、六原が言うには昨日屋上で村雲が瀬野に告白を」
「風切っち! それは内緒だって……あぁ」
殺気立っている女子三人を見て、理将は死期を悟った。
「昨日の屋上でのことも盗み聞きしてたの? 毎度毎度懲りないねリショーは」
「叶さん。判決は?」
「判決は……」
男達は先程自分達を庇ってくれた天使様である叶へ祈りを捧げる。困ったように頭を悩ませていた彼女は、やがて露わになっている右半分の顔でにこりと微笑んだ。
「じゃあ、ちょっぴり死刑」
育の足が唸りを上げ、教室が血で染まった。
◇
「……プロレスラーにでも襲われたのか?」
教室で一人昼食を食べている自分を訪ねてきた、男友達三人。彼らを見たシャギーの第一声がそれであった。フルフェイスヘルメットを被っている速人を除く理将と拳の顔は、ボコボコに腫れ上がっている。
「昨日の屋上盗聴がバレて、九頭龍坂にやられた」
拳の説明で、シャギーは大いに納得した。どうやら叶が冗談で口にした「ちょっぴり死刑」は、育には「半殺し」という意味に聞こえてしまったらしい。
「速人君は大したことなさそうだね。なさそうだよ。なさそうに見える」
「馬鹿を言うな。顔が無事な分、ボディを重点的にやられている」
完全に不良のやり方である。この怪我がまさかクラス委員長の女子によるものだとは、誰も思うまい。
「つーかさ、シャギーっちも蹴られなきゃ不公平じゃね?」
「恐ろしいことを言わないでくれ」
「そういえば、きずな裁判長からは蛇足の刑が科せられていたな」
「そこも律儀に守るのかよ風切。まあ、いいけどさ」
ということで、三人に一回ずつシャギーの言技“蛇足”が発現する。その結果理将には頭に小便小僧、速人には右手にエロ本、拳には背中に青いダソ君が付けられた。
ダソ君とは、シャギーの蛇足により三十回に一回ほどの確率で出現する足の生えた蛇のぬいぐるみである。これが中々チャーミングな容姿をしており、ダソ君の写真を撮ろうと拳の背中に女子が殺到した。
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