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「くっそ、大山っちは当たりかよ! つーか俺の頭から何か水出てんだけど、これ何?」
「水くらいいいではないか。オレは右手にエロ本だぞ! 校内で堂々とエロ本を持っているなんて、ハードボイルドではないッ!」
理将は水を受けるものを探し回り、速人は学ランの中に右手を突っ込みエロ本を隠す。女子に囲まれている拳は、罰ゲームであるはずなのに幸せそうであった。
「シャギーっちも自分でダソれよなー。じゃないと暴力委員長に突き出す」
「わかったよ。わかったさ。わかりました」
痛いのはごめんなので、シャギーは渋々己に蛇足を発現する。ボワンという音と共に、シャギーの頭に鍋が出現した。
「ラッキー」と、理将が己の頭上の小便小僧の股間より放水される水を、シャギーの頭の鍋に溜め始める。
「……重たくなってきたんだが」
「仕方ないだろー。床濡らすわけにもいかねーじゃん」
「蛇足の効果が切れれば水も消えるさ。消えるよ。消えるとも」
「おっ、そういやシャギーっちにいいニュースがあった」理将はニカリと笑い報告する。「村雲っちが瀬野を好きっての、勘違いだった」
「……え!?」
シャギーがガタリと椅子から立ち上がり、鍋から水がこぼれる。
「ちょっ! 座れってシャギーっち! 水がっ!」
理将の言葉など耳に入らず、シャギーは鍋を乗せた頭の中を整理する。屋上での告白は何かの間違いで、照子が好きな相手は大介ではない。
「なら、照子が好きな相手は他にいるのか?」
「さぁ? どうだろうね」
知らん顔で受け流す理将。友に対する誤解は解けたが、代わりに別のモヤモヤがシャギーの中に出現した。大介へ対する罪悪感である。
彼が気にしている桜ランクの問題に対し皮肉を述べ、優花のために頑張っている大介を馬鹿にするような行動を取った。
何故そのような行動を取ったのか。答えは単なるヤキモチである。今まで自分の側にいて当然であった女の子を奪われた。その嫉妬や妬みが、無実である大介に牙を剥いたのだ。
「最低だな……僕は……」
ポツリと言葉を落とす。昨日行動を共にしていた理将は、大方の事情を悟り背中を優しく叩いた。
「ちゃんと謝っとけよ」
「……あぁ」
友情に入った亀裂の修復が始まる。修復されたそれは、きっと前よりも強固なものになるだろう。前より強く。前より素晴らしい綺麗なものに。
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