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◇
昼食時、大介は自宅のアパートにいた。護衛が学校にいては役に立たないので、勿論今日は欠席している。ずる休みがバレたら育に蹴られるのだろうかと、大介は気が気ではない。
現在部屋にいるのは大介、優花、芦長の三人。節沢は自ら立候補して昼食の買い出しへと出ている。
優花はテレビのニュース番組をぼんやり眺め、芦長は仮眠を取っている。日中ならば奇襲の危険性も夜よりは少ないだろうということで、大介と芦長は交代で仮眠を取っていた。大介もそれなりに寝たので、大分頭も冴えてきた。
考えるのは、護衛の仕事のこと。思ったより長丁場になりそうで、大介は内心困っていた。何日も学校を休むわけにはいかないし、無責任かもしれないが今すぐにでも襲ってきてくれないだろうかと思っていた。
だが、やはりそんなミラクルは起きない。
大介は学校が好きであった。ついこの間からの話であるが。あんなに憂鬱であった学校がこんなに楽しい場所になるとは、夢にも思っていなかった。
そうなれたのは、皆のおかげである。きずなの、照子の、育の、叶の、シャギーの――。
「……社木」
初めてできた男友達の顔を思い出し、大介の頭は苦悩で埋め尽くされた。社木朱太郎。彼は自分に対し怒っていた。それが何なのか、大介にはわからない。そして今、自分とシャギーは喧嘩をしている状態にある。
ここで困ったことが一つ。友達のいなかった大介は、仲直りの仕方がわからないのである。
「何変な顔してるのよ?」
ふと気がつくと、優花の整った顔が間近にあった。驚いた大介は赤面して距離を取る。
「何ビビってるのよ。情けない」
「……何かキャラ違うくないか?」
「当たり前でしょ? 何でダーリンの前とアンタの前で同じ態度取らなきゃならないのよ」
大介の中で彼女のイメージが崩れていく。目を見張るような美人であるが、性格まで完璧ではないようである。
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