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「猫かぶってたのか。三毛崎みたいだな。いや、アイツほどじゃないか」
「何の話よ?」
「何でもない」
言って立ち上がり、大介は窓の外を確認した。素人とはいえ護衛である。警戒を怠りはしない。
「それで、さっきの変な顔は何だったの?」
「何でもないって」
「悩み事でしょ? 当ててあげようか。ズバリ、恋の悩みね!」
「ハズレ」
外の確認を終えた大介は、元の位置へと戻る。優花の豹変に最初こそ驚きはしたが、節沢と一緒にいる時の清楚で可憐なイメージよりこっちの方が話しやすいことに気づいた。
相手は大人の女性。自分で悩んでも答えは出そうにないので、人生の先輩に相談してみるのも悪くないのかもしれない。少し悩んだ後、大介は口を開いた。
「友達と喧嘩したんだけど、仲直りの仕方がわからないんだ」
「ぷっ! 何それアンタ小学生?」
相談したのは間違いであった。
「じゃあ、やり方教えてくれよ」
「簡単よそんなの。単純に……」
急に優花の声が途切れたかと思うと、彼女はその場で膝を抱え込んでしまった。
「ゴメン。私もわからない。友達とかいないから」
「……そうか」
大介は責めたりなどしなかった。彼女は桜ランクであり、その苦労は自分も嫌と言うほど知っている。友達もいなかったのではない。作れなかったのだ。
「でもさ、優花さんの言技は治ったんだろ? 友達とか作らないのか?」
「そうね。私の言技は治った。一さんが治してくれた。……それなのに、何で私はまだビクビクしてるんだろう。出会う人達にも、ついつい無愛想にして嫌われようとしてしまう」
「わかるよ。俺も桜ランクだから」
「え?」
驚き、優花が伏せていた顔を上げる。
「アンタも桜ランク? 何でそんな……護衛が務まるの?」
「その点は心配ない。複言との併用で桜ランクの言技を打ち消して戦えるようになったんだ。最近の話だけど」
「それじゃあ、アンタも治ったのね」
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