―其ノ弐― #2

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 大山、六原、シャギー。三つの選択肢の中から、大介は数日程度の差ではあるものの一番付き合いの長いシャギーを選び、電話をかけた。呼び出し音が数回鳴り、相手が電話を取る。 「もしもし。もしもし。もしもし」 「三段活用になってないぞ」 「流石の僕でも、もしもしの三段活用は難しいさ」  電話を取ったシャギーは軽く笑うと「で、何のようかな?」と大介に用件を尋ねた。 「さっき風切と会って聞いたんだが、大山が助けた女性はまだ側にいるか?」 「いるよ。知り合いなのかい?」 「知り合いというか何というか……」  大介は言葉に詰まる。フェイル絡みの仕事のことを話せば、シャギー達を巻き込みかねない。迷わず真実を伏せる選択をしたのだが、そうした上で女性を引き渡してもらう口実が思いつかない。 「えーっと……そのだな」 「もしかして、彼女とかだったりするのかい?」  冗談のつもりでシャギーが尋ねてみた。言い訳の思いつかない大介は、これを利用することを思いつく。 「そ、そうなんだよ! その人は俺の彼女でさ、悪い言技使いに追われてるんだよ。迎えに行くからさ、今何処にいるのか教えてくれないか?」 「――ふざけるな」  それは、普段温厚な彼からは想像もできないほど低く暗い声であった。 「……え?」 「彼女だって? つい最近まで友達すらいなかった奴が何を言っているんだ。ふざけるな」シャギーはボソリと付け加える。「照子の気持ちはどうなる」 「お、落ち着けって社木。何怒ってんだよ?」 「切るぞ」 「なっ!? 待てよオイッ!」  理由はわからないが急に電話を切られそうになり、焦った大介は伏せたかった真実をやむを得ず少しだけ紐解く。 「その人は“桜ランク”なんだ! どんな言技なのかは知らないが」 「彼氏なのに知らないのか?」 「とっ、とにかく一緒にいると危険かもしれない。早く居場所を」 「桜ランクだから、一緒にいると危険か」大介の要求を遮り、シャギーが吐き捨てる。「それは、キミが言えたことじゃないだろう」  この言葉には、大介も気分を害した。
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