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大山、六原、シャギー。三つの選択肢の中から、大介は数日程度の差ではあるものの一番付き合いの長いシャギーを選び、電話をかけた。呼び出し音が数回鳴り、相手が電話を取る。
「もしもし。もしもし。もしもし」
「三段活用になってないぞ」
「流石の僕でも、もしもしの三段活用は難しいさ」
電話を取ったシャギーは軽く笑うと「で、何のようかな?」と大介に用件を尋ねた。
「さっき風切と会って聞いたんだが、大山が助けた女性はまだ側にいるか?」
「いるよ。知り合いなのかい?」
「知り合いというか何というか……」
大介は言葉に詰まる。フェイル絡みの仕事のことを話せば、シャギー達を巻き込みかねない。迷わず真実を伏せる選択をしたのだが、そうした上で女性を引き渡してもらう口実が思いつかない。
「えーっと……そのだな」
「もしかして、彼女とかだったりするのかい?」
冗談のつもりでシャギーが尋ねてみた。言い訳の思いつかない大介は、これを利用することを思いつく。
「そ、そうなんだよ! その人は俺の彼女でさ、悪い言技使いに追われてるんだよ。迎えに行くからさ、今何処にいるのか教えてくれないか?」
「――ふざけるな」
それは、普段温厚な彼からは想像もできないほど低く暗い声であった。
「……え?」
「彼女だって? つい最近まで友達すらいなかった奴が何を言っているんだ。ふざけるな」シャギーはボソリと付け加える。「照子の気持ちはどうなる」
「お、落ち着けって社木。何怒ってんだよ?」
「切るぞ」
「なっ!? 待てよオイッ!」
理由はわからないが急に電話を切られそうになり、焦った大介は伏せたかった真実をやむを得ず少しだけ紐解く。
「その人は“桜ランク”なんだ! どんな言技なのかは知らないが」
「彼氏なのに知らないのか?」
「とっ、とにかく一緒にいると危険かもしれない。早く居場所を」
「桜ランクだから、一緒にいると危険か」大介の要求を遮り、シャギーが吐き捨てる。「それは、キミが言えたことじゃないだろう」
この言葉には、大介も気分を害した。
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