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「何なんださっきから。意味わかんねーよ」
「わからなくて結構だ。心配しなくてもキミの彼女は警察にでも引き渡すよ。では、さようなら」
「オイ! 待て社木ッ!」
そうして、シャギーとの通話は途切れた。
◇
「ちょっと、今の電話誰からなの?」
携帯電話をしまうシャギーへ向け、節沢の彼女が尋ねる。彼らが今いるのは、ゲームセンター内の休憩室。彼女は頭からタオルを被り、雨で冷えた体を温めるために自販機で購入したココアを飲んでいる。
ちなみに、彼女は財布を持っていなかったのでココアはシャギーの奢りである。
二人に拳と理将を加えた四人で一つのテーブルを囲み、彼女に警察へ行くよう説得していたところに、大介からの電話がかかってきたというわけだ。
「今の電話かい? アナタの彼氏である瀬野大介君からだよ」
「はぁ!?」
「マジかよ!」
まさかの彼氏判明に、拳と理将が驚きのあまり立ち上がる。
「は? 誰よそれ。私のダーリンは節沢一さんただ一人よ」
誤情報はあっさりと彼女に否定され、拳と理将は胸を撫で下ろして席につく。彼女の否定に対し、シャギーは驚くことなく「だろうね」と独り言のように呟いた。
目の前の女性が大介の彼女だなど、シャギーは端から信じてはいなかった。ただ、許せなかったのだ。照子に告白された矢先に、嘘でも彼女がいるなどと口走る大介が。
大介が彼女の彼氏ではないという念のための確認も終えたところで、シャギーは状況を進展させるべく話を始めた。
「話を整理しよう。アナタは先ほどの西洋甲冑と子供に追われているが、警察には行きたくない。ならば、僕達はアナタをどうすればいいのかな。いいのだろう。いいのでしょう」
「ほっといてくれればいいって言ってるじゃない」
「そうやって人を突き放すのは、アナタが桜ランクだからかい?」
シャギーからの問いかけに、彼女は言葉を噤む。
「心配しなくてもいい。僕らの身近にも桜ランクの友人がいるのでね。邪険にしたりはしないさ」
「……何でアンタがそのことを知ってるのかは知らないけど、警戒する必要はないわ」彼女は一変し、しれっとした表情で言う。「私の言技は、治ったもの」
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