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言技が治る。その言葉は誰が聞いても違和感を感じるもので、シャギー達も例に漏れなかった。言技は発現時のランクを維持し続ける。ランクが上がることなどない。
彼女自身が己の危険性は皆無だと言う以上、それ以上追求することはできない。追求したところで、彼女の性格上答えないであろうことは容易に想像がつく。
「わかった。アナタの言技に危険性はない。では次に、追っているのは誰だ?」
「フェイルよ」
「フェイル?」
「まぁ、知らないわよね。桜ランクを狩る奴らのことよ。桜ランクは他人を巻き込み被害をもたらすから、駆逐しようっていう野蛮な集団。馬鹿けてるわ。それに、私は治ったから危険じゃないのに」
曇った表情の彼女には、花のような儚さが感じられた。そっと触れただけで壊れてしまいそうな、崩れてしまいそうな、そんな儚さ。
シャギーが困った顔で黙っていると、彼女は儚げな雰囲気を消し去り「でも、大丈夫」と口にした。
「大丈夫?」
「ええ。今私のダーリンがとびきり強いボディーガードを探してくれているわ。あの鎧野郎、返り討ちにしてやるんだから!」
復讐に燃える彼女の横で、シャギーは大まかな状況を理解した。そのボディーガードが、大介だということを。
となると、彼女を引き渡さないわけにはいかない。命がかかっている以上、自分の嫉妬で彼女を振り回すわけにはいかない。シャギーもそのことはわかっていたが、大介に電話をかけ直す気にはどうしてもなれなかった。
「警察では駄目なのか? 駄目ですか? 駄目でしょうか?」
「だから、嫌って言ってるでしょ」彼女は小さく付け加える。「それができたら、こんな苦労してないわよ」
「……そうか。すまないが理将君、大介君に連絡してくれないか? 目的の彼女は三丁目のハンバーガーショップにいるって」
「了解」と、今まで黙って二人のやり取りを傍観していた理将が携帯電話を取り出す。電話をかけようとしたところで、些細な疑問が理将の手を止めた。
「ちょい待ち。ハンバーガーショップってすぐ近くじゃん。別に場所変えなくても、ここで落ち合えばよくね?」
「それも一理あるんだが、追っ手が戻ってこないとも限らない。かといって長距離の移動も危険だ。だから、近場で場所を変えておく」
「ウォレも社木の意見に賛成だ。次に遭遇したら、追い払える自信ないし」
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