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「やぁ、遅いじゃないか大介君」
「悪い社木。アホ探偵のせいで遅れた。何が到着時刻は計算できるだよ。遅れまくりじゃねーか」
「一分一秒正確になどできるわけないだろう。無茶を言うな」
言い訳をする探偵を引き連れた大介の登場に、アキラが「面倒な」と声を漏らす。彼女の視線が大介へ向けられているうちに、シャギーと理将は拳を担ぎ大介の方へと逃げ出した。
「大介君、まずは今の状況だが」
「大丈夫だ。探偵が節沢さんに仕込んだ盗聴器で状況は大体把握できてる。――剣岳がフェイルってこともな」
「ビックリしたかい?」
ヘラヘラと笑いながら、天吾はペンを片手で弄ぶ。
「いや、寧ろしっくりきた。お前が保健室で取材とか言って俺の言技について色々聞いてきたのも納得がいく。つまりは、お前が俺担当のフェイルメンバーってことだろ?」
「ご明察」
パチパチと笑顔で手を叩き、大介の推理を褒める天吾。しかし、その目は欠片も笑っていない。そんな目をアキラへと向ける。
「というわけだからアキラ、キミは新を連れて園山優花を追ってくれ」
「だが、私はコイツとの再戦が」
「追えっつってんだろ」
天吾の口調が低く迫力のあるものへと変わる。たじろいたアキラは、武器を消滅させて「わかった」と大人しく了承すると、新を連れて優花を連れ去った速人を追い出した。
「行かせるか!」
「待ってくれよ瀬野さん」天吾が大介を止める。「さっき自分でも言ってただろ? キミの担当はボクだ」
「だったらどうするってんだよ。お前の言技は“ペンは剣より強し”。綺麗な文章が書けるだけってのは知ってんだぞ」
「あぁ、そうだよ。勿論キミのように復言使いでもない」
天吾の言うことが嘘ではないことは間違いない。何故ならば、梅ランク以下しか入学できない大介達の高校に入るには言技のランク付けを受けた証明書の提出が必要不可欠であるからだ。
攻撃に特化した言技には、竹ランク以上の評価が下されるのが一般的。なので、もし天吾が攻撃に向いた復言を有しているのならば、大介達の高校に通えるはずがないのである。
大介のように入学してからの短期間で復言が発現したとは考えにくい。以上の点を踏まえると、天吾の言技は“ペンは剣より強し”のみと考えていいだろう。
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