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何よりも、節沢を心の底から信用したい。お互いに包み隠さず、全てを晒け出したい。その上で、愛したい。
「……駄目だ」
だが、節沢はその想いに答えてはくれなかった。
「やっぱり、私のことなんて愛してないのね」
「それは違うっ! ボクにはキミがいないと駄目だ!」
「ならどうして教えてくれないの!? 疑問点が多すぎるのよ! 毎晩の棘の奇襲に耐えるアナタは、一体いつ睡眠を取っているの? 何故掠り傷すら負ったことがないの? 一度でいいから夜の様子を録画して私に観せて! 私にアナタを信じさせて……心の底から愛させて」
胸の内を吐露する愛しい人。心の叫びとも言えるそれを受け止めた節沢は、頑なに拒んできた真実を紐解く。
自分だけ秘密を持ち愛しているだなど、都合のいい話である。どのみち永遠に隠し通せることではないのだ。
そして、彼は真実を告げる。
「優花。ボクはね、もう死んでいるんだ」
――それは、あまりにも残酷な事実であった。
「……死んでる? え、それってどういう……?」
「おやおや? 痴話喧嘩かなお二人さん」
優花が言葉の真相を確かめようとした時、介入してきた第三者の声。二人が目を移すと、そこには三人組が立っていた。うち二人には見覚えがある。しつこく優花を狙うフェイルの二人組であった。
となると、残る一人に対する疑問が生じる。
「キミは誰だ?」
「初めまして。ボクは剣岳天吾。普通の高校一年生で、フェイルのメンバーだ」
「……加勢に来たのか」
「加勢というか、ボクのターゲットは別にいるんだどね。知っているだろ? 瀬野大介だよ」
「彼なら来ないわ」優花が告げる。「もう護衛の契約は解消したの」
「みたいだね。残念だよホント。まぁ、後で殺しに行くけどね」
ヘラヘラと笑うと、天吾は一歩後退する。
「というわけで、キミらの相手はアキラだよ」
代わりに前に出てきたアキラは、鎧を纏わず手元に日本刀を召喚する。刃をギラつかせ迫るアキラの前に、節沢が立ちはだかった。
「駄目よ一さんっ! 逃げてっ!」
「大丈夫」と、節沢は微笑んだ。「見ててくれ。これでキミの疑問が解けるから」
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