―其ノ肆―

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「悪? 裁き? アンタ達が正義だっていうの?」 「そうだ」 「ふざけないでっ!」  優花の手がしなり、天吾の頬にビンタを浴びせる。赤くなった頬を撫でると、天吾はそれまで温厚そうであった顔を怒りで歪ませた。 「桜ランク如きがボクに何をしたァッ!」  綺麗な優花の髪を掴むと、天吾は彼女を地面へ投げ飛ばす。 「痛っ!」 「痛いじゃねーよ。お前が串刺しにした人間の痛みは、こんなものじゃなかったはずだろ?」  過去を抉り、天吾は優花の頭を踏みつける。気が付けば、周りにはギャラリーが集まっていた。 「ほら、見たことか」アキラが溜息をつく。「お前のやり方は派手すぎるのだ」 「アキラだって派手だったろ?」 「私のは人を遠ざける派手さだ。貴様のは人を引きつける派手さがある」  例えば、切り裂き魔が暴れていると聞いてその現場へ向かう者は少ない。だが、火事が起こったと聞いて危険であるにも関わらず現場へ向かう野次馬は何故か多い。天吾が起こした爆発は、後者に当てはまるものであったようだ。何事だろうかと確認するため、人が集まって来てしまうのである。  そして当然、日本刀を持った人間が暴れて爆発まで起きた場合には警察もやってくる。あっという間に周りを警察官に囲まれたフェイルのメンバー。にも関わらず、彼らの顔に焦りはない。 「うっ……ゆ、優花を放せ」 「黙っていろ」  アキラは手元にランスを出現させ、起き上がろうとしている節沢の背中に突き刺す。ランスは胴体を貫通し、真下のアスファルトに突き刺さった。  呻き声が上がり、これには集まったギャラリーも逃げ始める。これはアキラの言うところの“人を遠ざける派手さ”であった。  犯人が言技使いであることを認識した警官達は、銃を一斉に向ける。 「両手を上げて人質を解放しろ!」 「まあまあ落ち着いてお巡りさん」  のんびりと余裕のある口調で警官を宥めると、天吾は一枚の紙を取り出した。それは、誰かの印鑑が押された書類のようなもの。 「ボク達はフェイルだ。ランク“桜ノ中”の言技“薔薇に棘あり”の発現者である園山優花の処分命令が上から出ている。皆さんは一般人が近づかないよう人払いをお願いします」
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