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アキラは泣き出しそうな新を抱き締めた。
「私は強いからな。心配ない。正義のために悪を……桜ランクを野放しにしてはいけないんだ。もう二度と、あんな事件を起こさせてはならない。私達フェイルはそう誓ったはずだろう?」
腕の中で新は頷く。
「それでは行こう。仕事が終わったら、風呂で背中でも流してくれ」
アキラの言葉に、新は涙目で子供らしく笑った。ジーンズを穿きYシャツを着たアキラは、扉へと向かう。
――ゴンゴンと、ノックの音が響いた。
アキラは目の色を変えて警戒し、新を後退させ剣を手に召喚した。それを握り締め、ドアスコープを覗く。ノックの主を確認した彼女は、剣を消滅させて扉を開けた。
「久しぶりだねアキラ」
扉の向こうには、学ランを着た男が立っていた。
「何故貴様がこの街にいる?」
「何故も何も、ボクは君達より先にこの街にいたんだよ? 四月から一応高校生をやっているんだ」
男が着ている学ランのボタンに目を落とし、アキラは納得する。
「なるほどな。飛火夏虫は貴様のターゲットだったのか」
「そういうこと。困るなぁ勝手に手を出してもらっちゃあ。おまけに逃げ帰るなんて、同じフェイルとして情けない限りだよ」
言い返すことができず、アキラの顔が苛つきを増していく。
「言っておくが、生半可な方法で勝てる相手ではないぞ」
「わかってるよ。そのための仕込みも終わっている。あ、久しぶりだな新」
『近づくんじゃねぇボケ』
暴言を書き殴り反抗するも、新はすぐに髪がグシャグシャになるまで頭を撫でられてしまった。
「瀬野大介をやるのはボクだ。と言いたいところだが、キミらのターゲットと共に行動しているならちょうどいい。協力して纏めて始末しないか?」
「……貴様が誰かと組もうと言うのは珍しいな。どういう風の吹き回しだ?」
「嫌だなぁアキラ。仕事に確実性を求めた結果だよ。いい加減学園生活ってのにも飽きてきたから、今夜にでもケリを付けてしまいたいんだ」
男の言い分を聞き、アキラと新は顔を見合わせる。そして、承諾するという結論を出した。
「いやぁ、三人で集まるのは久しぶりだね。先に何か美味しいものでも食べようよ。同級生の女にゲル状のクッキーっていうわけのわからないもの食べさせられたっきりなんだよね」
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