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「おい、そんな暇は」
「根詰めすぎもよくないって。新がいる限り逃げ場なんてないんだし、気楽に行こうよ」
ヘラヘラと笑っている男に対し、アキラは露骨に嫌そうな顔をした。それは新も同じである。
「いやぁ、暴れるのは久しぶりだ。楽しみだな」男は上機嫌の様子で、右手に持つペンを回している。「いい報告文章が書けそうだ」
端から見る限りでは、メガネを掛けた優男。だが、アキラのような戦いの場に身を置く者には嫌でも伝わってくるのである。
――彼から溢れ出る、異常なまでの殺気が。
「ボクが消し飛ばしてやる。桜ランクを。あの事件のようにィ!」
「押さえろ。私は貴様のそういうところが苦手なんだ」
「ハッキリ言うなぁアキラは」
あっけらかんと笑うと、「じゃあ、ファミレスでも行こう」と部屋を出た。アキラと新も、嫌々ながらそれに続く。
部屋から出る前に、新がメモ帳を見せた。
『やっぱりアイツと組むの辞めない?』
「……いや、仕事のためだ。我慢しよう」
二人は揃って溜息を落とし、部屋のドアをゆっくりと閉めた。施錠を確認しながら、アキラが言葉をこぼす。
「いつ会っても嫌な男だ――剣岳天吾」
決着の夜が、刻一刻と迫る。
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