―其ノ肆― #2

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 きずなと育がここに来た経緯を語る横で、照子は一人想い人であるシャギーとの遭遇にドキドキしていた。 「わらわらと集まってきたね。こりゃまた面倒だ。いや、好都合と言うべきかな」  ここで今来たばかりの女子三名は、大介と対峙している天吾の存在にようやく気づいた。大介の護衛やフェイルの話など聞いていない三人には、状況が飲み込めない。  なので、きずなが勘違いをしてしまうのも無理はないのである。 「オースケ、テンゴと喧嘩してるの? 仲良くしなきゃ駄目だよ。それと、ここで何かあったの? あ、わかった! オースケが悪い人を追い払ったんでしょ? さっすが飛火夏虫っ! でも無茶しちゃ」 「馬鹿ッ! 来るな!」 「なっ! 馬鹿とは何なのさっ! 厨二病のくせに!」 「まあまあ、心配しなくてもきずなさんに手は出さないよ。でも、キミを血祭りに上げるために利用しない手はない。――だから、ちゃんと守ってくれよ?」  天吾の最後の言葉が引っかかる。それをどう捉えればいいのか考えているうちに、天吾はきずなへ話しかけた。 「きずなさんは、この前ボクがプレゼントしたペンを今持っているかな?」 「もっちろん! ここにあるよー」  鞄から取り出したのは、青いボールペン。それを見た天吾はニタリと笑う。大介は嫌な予感がした。そして、それは天吾が指をパチンと弾いた瞬間、現実のものへと変わった。 「――ッ!?」  突如として展開する無数のKEEP OUT。それはきずなの掲げるペンを中心に広がり、他の仲間達にまで到達している。  そのペンの何がどう危険なのかはわからないが、黄色いテープによる危険予知は大介の経験上外れたことがない。考えるより先に、声を張り上げた。 「きずな! そのペンをこっちに投げろォ!」 「えっ? へっ? なっ、何で」 「早くしろッ!」  あまりにも凄い剣幕で怒鳴るので、きずなは涙目になりながらペンを大介へ投げる。それを掴もうと手を伸ばすと、黄色いテープはその色を赤へと、KEEP OUTからDANGERへと変化させる。  それを躊躇なく掴み取り、大介の言技が発現した。  言技“飛んで火に入る夏の虫”。  復言“心頭滅却すれは火もまた涼し”。  節沢に聞いた天吾の武器情報とテープの展開範囲からして、大介は何となくではあるがこのペンがどのような危険を有しているのか察していた。
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