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「ただ何も知らずに、みんなが楽しく、平和に暮らせたら……。」
「そうだな。だけどそれはできない。お前が一番よく知っているはずだ。」
「うん……。」
「そして路線能力者に選ばれた以上、この運命から逃れることはできない。」
「っ!!!!」
「初めて会った時、俺にそう言ったよな。」
雅和はそう言うと憐の目の前に立った。
「憐はどうしたいんだ?」
「僕は……。」
憐が答えに迷っていると執務室に誰かが入ってきた。
「憐、遅れてごめん!!!!」
「伊吹……。」
「うわっ……。この暗い雰囲気は何?」
清澄伊吹(きよすみ いぶき)はそう言うと憐の元へ行った。
「なに、また憐のネガティブ発言?」
「あぁ。」
雅和が答えると伊吹はため息を吐いた。
「れーん、平日に呼ばれた時点で全員理解しているよ。」
「っ!!!!」
「それに憐が思っている以上にオレらは強いと思うけど?」
伊吹が言うと憐以外の全員が頷いた。
「まっ、オレらはまだ現場デビューしていないから何とも言えないけれどー。少なくとも他の路線能力者より戦える自信はある。」
「おぉー、言い切ったなー!」
「憐と雅和の模擬戦が過酷だからだよ。自覚あるの?」
「無いけど、伊吹が言うならそうなんだろうな!」
雅和がそう答えると突然、憐が笑い始めた。全員が驚く中、憐は「そうだね」と答えた。
「僕らはこの日のために備えてきた。悩む必要なんて最初から無かったのに。」
「吹っ切れたか?」
「うん。ありがとう。」
「いいえ。じゃあ、光が戻ってきたら説明だな。」
「そうだね。」
雅和の言葉に憐が返事をすると突然、執務室に聞きなれない緊急アラームの音が鳴った。伊吹がタブレット端末で何かを確認すると憐を見た。
「代々木上原駅地上で未確認の反応アリ。」
「……やっぱり今日だったか。」
憐がそう言うと憐のスマホに電話が入った。憐は相手を確認するとスピーカーにして電話に出た。
『憐、聞こえる!?!?』
「聞こえるよ。どうしたの?」
『突然、ソウルサークルが光ったんだ。見たこともない光り方だった。』
「光、今どこ?」
『今は……』
湯島光(ゆしま みつる)がそう言うと執務室に入ってきた。
「ちょうど着いたところ。」
光は電話を切ると憐を見た。
「憐、俺らはいつでも行けるよ。」
「分かった。」
憐は頷くと全員を見た。
「説明する前に事件が起きたから先にそっちを片付けるよ。」
「了解。」
「それに現場に行けば僕の説明が省けるからね。」
憐が言うと9人は執務室を後にした。
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