第7章 恋する乙女とデート大作戦!

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「はい? なんでしょうか?」 ピタリ、足を止めて顔だけ俺に向ける眼鏡メイド。 瞳と瞳が重なる。 「偉そうに説教するのは勝手だけどな、一体誰の努力が無駄だってんだよ?」 「今の話を聞いていなかったのですか? そこの勘違い女のことです」 「そうかよ。けどな──他人に否定されていい努力なんてこの世にはひとつもねぇんだよ」 俺が眼鏡メイドに怒りを込めて放つと、美月は、「……蒼介」とか細い声を漏らした。 「お前の言う通り、確かに美月はやり過ぎなところがある。他人に誤解されやすいところがある。 だけど、こいつはいつもいつも必死なんだ。周りが見えなくなるくらい無我夢中なんだよ。そんな奴の努力を無駄呼ばわりするのは、この俺が絶対に許さねー」 我ながらクサイ台詞だと思ったが、気持ちに嘘はない。 俺は少なくとも、今の美月を認めている。 だからこそ、改めて眼鏡メイドにハッキリと宣戦布告した。 「二階堂にも言っとけ。この生徒会選挙──勝つのはうちの美月だってな!」 俺が高らかに告げると、眼鏡メイド静かに部室の扉へ歩き出して、 「童貞の分際で大きな口を叩かないでください」 「な、なんだとこの野郎!」 「──しかし、私も少しだけ選挙の行く末が楽しみになりました。あくまでも敵同士ですが、お互いに全力を尽くしましょう」 バタン。 眼鏡メイドはスカートのフリルを揺らしながら、扉を閉めて俺たちの前から姿を消した。 お互いに全力を尽くしましょう、か。 どうやら俺の宣戦布告を相手も本気で受け取ったみたいだな。 「美月」 俺は眼鏡メイドの捨てたチラシを拾って美月に手渡す。 「生徒会選挙、絶対に勝つぞ」 美月は一瞬大きく瞳を開いて、ほんのりと頬を赤く染める。 「……あ、あんたに言われなくてもわかってるわよ。で、でも……さっきは私のことを庇ってくれて……あ、ありがと」 照れ臭そうに俺を見上げて、美月はチラシをきゅっと抱きしめた。
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