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「なーにが光栄ですね、よ! バカにしてんの!?」
「いえ、バカにしていません。少なくとも私は、貴女をお嬢様の敵に値するくらいには買っております」
「上から目線で語らないで。ここへ来た用件をいいなさい──返答次第じゃタダで返さないから」
二人の間にバチバチと青い火花が飛び交う。
姉貴もそうだったが、ブチ切れ寸前の女ってスゲー怖いな……。
「タダで返さないから、ですか。つまりそれは、肉体的関係を示唆する発言と受け取って相違ないのでしょうか?」
「に、肉体的関係!? って、あんたなに顔赤くしてんのよ!?」
「……ハァ。お嬢様の敵とわかっているのに、身体が勝手に反応してしまう。要するにですね、私も溜まるときは溜まるということです」
「変態!?」
頬に手を添えてうっとりする眼鏡メイドに、美月は身の危険を感じて一歩下がった。
どうしてこの学園には、こんなにも変人が多いのだろう。
「変態とは失礼な。私はそこのケダモノと違っていやらしい女ではありません。強いて言うのなら、百合です」
「やっぱり変態じゃない!」
「罵られるのも大好物です」
「聞いてないわよ!」
ぜぇぜぇと美月は相手のペースにはまって息を切らす。
予想以上の変人スペックに、俺も若干引き気味だ。
もしかしたら、あの猫耳先輩とタメを張るかもしれない。
「ど、どうでもいいけど……は、早く用件だけ話しなさいよ」
「わかりました。私がここへ来たのは忠告のためです」
「忠告?」と美月が首を傾げると、眼鏡メイドは例のチラシを胸元から取り出した。
どこに仕舞ってんだよ、こいつ。
「このメイド部宣伝のチラシは、貴女が校内に貼ったものですか?」
「そうだけど、悪い? 部活の宣伝をするのは、別に校則違反でもなんでもないはずよ」
「はい、確かに校則違反ではありません」
「だったらなに?」
「──しかし、他の部活に所属する生徒たちには迷惑となります。一個の過剰な部活の宣伝は、風紀委員会の許可するところではないということです」
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