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「風紀委員会ですって?」
「はい。貴女もご承知の通り、風紀委員とは学園の秩序を保持する生徒会に次ぐ組織の名称です」
この眼鏡メイドが言うと、まるで風紀委員会がバトル漫画の正義を掲げる巨大組織に聞こえる。
一応断っておくが、あくまでもごく普通の学園レベルの風紀委員会だからな。
「……う、嘘でしょ。まだこの学園には生徒会の他にもそんなヤバイ組織が存在していたって言うの?」
お前も乗るなよ、美月。
「通称──裏生徒会の補佐機関、闇風紀委員会」
やべぇ、ちょっとカッコイイ。
っていやいや。学園の秩序保持が目的の組織なのに、闇が頭に付いちゃってんぞ。
絶対に悪の組織だろ、ソレ。
「闇……風紀委員会、ですって?」
美月は苦い顔をして、きゅっと拳を握る。
もうダメだ。割りと美月はマジメだった。
「はい、闇です。今回、その闇風紀委員会に例のチラシの件をお話ししたところ、他の部活の宣伝妨害に該当するという回答を頂きました」
「宣伝妨害!?」
「そうです。つまり、部活掲示板以外の壁や窓に何十枚のチラシを貼り付ける行為は学園の秩序保持に反しているのです。なので、今日中にチラシの回収をお願いします」
「ふざけないでよ! せっかく作ったチラシを簡単に剥がすなんてできるわけないでしょ!?」
「これは命令です。貴女は自身を女王だと謳っていますが、所詮は裸の王様なのですよ。周囲の信頼なしに人の上に立つことなど不可能──自己陶酔は惨めなだけです」
眼鏡メイドは冷酷な瞳で告げると、チラシを床に捨てて美月に背中を向ける。
「私の言う通り、無駄な足掻きをしているようですが、貴女ではその努力の全てが本当に無駄なだけです。メイド部などとふざけた部活を作ってお遊び感覚は結構ですが、あまり落胆させないでくださいね」
スッと美月から視線を外し、部室から去ろうとする眼鏡メイド。
美月は唇を噛み締めるだけで、反撃さえできない。
悔しくて、惨めだと言われて、あいつの身体はただその台詞に耐えるために震えていた。
「──おい、ちょっと待てよ」
と、立ち上がる俺。
無理だった。
このままやられ放題の美月を黙って見ていられる程、俺もまた人間ができていなかったのである。
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