1166人が本棚に入れています
本棚に追加
/359ページ
「い、いや。べ、別にお礼を言われる程じゃねーよ」
うわっ、や、ヤバイ。
至近距離で美月を見てたら、なんかドキドキしてきやがった。
あの時もそうだったけど、ちょっと変だ俺。つ、疲れてんのかな。
「ね、ねぇ蒼介──あ、あんたってさ、すす、好きな子とかいるの?」
美月は顔をみるみる赤くしながら、突拍子もないことを訊いてきた。
な、なんだよその質問っ。ど、どうしていきなりそんな!
「……わ、私はね……そ、その……じ、実は」
「──桐生君、美月ちゃん、お待たせし」
と、俺たち二人が見つめ合っているところに、部室の扉を開けて若葉が入ってきた。
若葉は俺と美月の姿にパチパチと瞳をまばたきさせて、言葉を途中で詰まらせる。
た、タイミングが悪いぜ、若葉さん……。
「も、もしかしてお二人とも……ま、またキスを?」
ボッと顔を赤くする若葉に、俺たちは慌てて弁解した。
「ちち、違うぞ若葉! ここ、これは別になんでもなくってだな! やましいことは一切していない!」
「そそ、そうよゆかり! わわ、私と蒼介がキキキ、キスなんてするわけないでしょ!? まま、まったく想像力豊かねあんたは!」
ザザッと音立てて、俺と美月はお互いに距離を取った。
マジで心臓が飛び出そうだ。鼓動の早さがハンパねぇー!
「……そ、そうなんですか? わ、わたしにはお二人がキスしようとしている風にしか見えなくて」
「「忘れろッ!」」
と、二人完璧にハモって若葉に命令口調で言った。
「はは、はいっ! すす、すぐに忘れます!」
若葉はビクリ身体を反応させ、んーっと力強く目を瞑る。
ちょっとかわいいな。
というか若葉はなにも悪くないよな、うん。
とりあえず俺は乱れた息を整えて、ホッと胸を撫で下ろした。
最初のコメントを投稿しよう!