散りゆく桜③

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幼い頃夜桜は桜という名前だった 吉田はその頃から桜に対して異常に執着していた それが攫われた挙句 恩師である吉田松陰を幕府に殺されたことによってさらに拍子がかかったのだろう 桜も吉田のことを愛してはいたが幼い桜はまだ恋というものを知らなかった 「君は無邪気でとっても可愛らしかったのにどうして汚れてしまったの?」 吉田が言った 瞳に揺れているのは狂気 深い闇が彼の中に存在している 夜桜は言いたかった 貴方しか愛しておりません 貴方だけを待っておりました、と それならば彼の闇を少しだけ消してあげることもできるはずだ それができないのは夜桜が恋するということを知ってしまったから それでも吉田は夜桜にとって兄のような存在 「…ごめんなさい ごめんなさい」 夜桜は涙を流しながら謝った 「…ハハッハハハハハ」 吉田が急に笑い出した そして夜桜の腕をつかんで隣の大部屋へと足を運ぶ 「…吉田先生!」 中には数人の男達 「この女は壬生狼の土方の女だって 皆可愛がってあげて」 「…壬生狼…の…土方」 それを聞いて怒りをあらわにする者 下心丸出しで笑い出す者 夜桜は今から行われるであろうことが分かって後ずさった それを後ろから吉田が押さえる 「…!いやぁぁぁぁぁぁ」 「君が悪いんだよ 僕を裏切ったりするから」 「…いやっやめて!」 その時勢いよく襖が開いた (クソッ嫌な予感がすると思って来てみれば…) 「久しぶりだね、土方歳三 どうしてこんなことになってしまったか分かる? それはね、君が壬生狼の土方だからだよ」 「…吉田!」 (…俺の…せい…か) 土方は歯を食いしばった その時浪士達が土方に襲いかかる それと共に湧き出る怒り (おまえら絶対に許さねぇ) 土方は次々と圧倒的な強さで浪士達を殺していく 残るは吉田だけになった 「まったく 皆使えないね」 吉田はそう言って夜桜の首筋に刀を当てた 土方は動けない 「…栄太郎様…もうこんなこと…おやめください…」 夜桜は震える声でそう言った
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